アスベスト(石綿)訴訟(工場労働者型)とは
アスベスト(石綿)工場の元労働者やそのご遺族の方々が、国に対して訴訟を提起し、一定の要件を満たすことが確認された場合に、訴訟の中で和解手続を進め、国から損害賠償金が支払われる手続です。平成26年10月9日の最高裁判決において、国が規制権限を行使してアスベスト(石綿)工場に局所排気装置の設置を義務付けなかったことが、違法であると判断されました。それを踏まえて、一定の要件を充足する方に対して、最高1300万円の和解金が支払われることが決定しました。
アスベスト(石綿)訴訟の訴訟類型には、工場労働者型(屋内型)の他に、建設労働者型(屋外型)と呼ばれるものもありますが、建設労働者型については、確立された要件が示されておらず、個別の事情により見通しが大きく左右されるので、個別に弁護士にご相談ください。令和3年5月17日最高裁判決を受けて、ご依頼をお受けした後に受けられる賠償の内容や条件が変わる可能性があります。
和解の要件
工場労働者型(屋内型)の訴訟については、証拠資料により、一定の要件を充足することが確認された場合には、国は、訴訟の中で和解手続を進めることとしています。
ア 昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。
※労災保険や石綿健康被害救済法による給付を既に受けられている方であっても、上記期間内に労働者として石綿粉じんにばく露する作業に従事した方は対象となります。また、これらの制度により給付された金額は今回の賠償金から差し引かれません。
イ その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと。
※「石綿による一定の健康被害」とは、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などをいいます。
ウ 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。
和解金額
和解金額は、次のとおりです。
① | じん肺管理区分の管理2で合併症(続発性気管支炎、続発性気胸、肺結核等)がない場合 | 550万円 |
② | じん肺管理区分の管理2で合併症がある場合 | 700万円 |
③ | じん肺管理区分の管理3で合併症がない場合 | 800万円 |
④ | じん肺管理区分の管理3で合併症がある場合 | 950万円 |
⑤ | じん肺管理区分の管理区分4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚の場合 | 1150万円 |
⑥ | 石綿肺(じん肺管理区分の管理2、3で合併症なし)による死亡の場合 | 1200万円 |
⑦ | 石綿肺(じん肺管理区分の管理2、3で合併症あり、または、じん肺管理区分の管理4)、 肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合 |
1300万円 |